どんなに心を痛めてもこの涙は渇きを癒せない
どんなに声を嗄らしても虫の羽音ほども届かない
窓一枚隔てて広がる空は世界にひとつきりなのに
雨も風も雲も何ひとつ僕らをあまねく包むことはない
高精細フルカラーの画面に手を伸ばしても
硬い手触りがわずかな熱とともに跳ね返るだけ
ほら
鮮やかに晴れ渡る空のかなたで 雨が落ちる
閉ざした瞼の裏に映る空にも 雨が落ちる
どれだけ夜を数えたら灯りのない闇を抜けるだろう
どれだけ言葉重ねたらはかない嘘は希望に変わるだろう
降り注ぐのは絶望と手を結んだ幾千の砂の粒
誰もが一人分に満たない傘を抱いて途方に暮れている
高精細フルカラーの画面を見つめる僕らは
膝の震えさえもいつしか共鳴し始めているらしい
今
しめやかに垂れ下がる鈍色の雲 雨が響く
閉ざした扉静まる街の気配 雨が響く
高精細フルカラーの画面に映らない僕らは
終われないこの街の片隅で今日も
花を告げる風に吹かれて
しめやかに垂れ下がる鈍色の雲 街を染めて
その瞳にその口に 涙をたたえ 希望を乗せて
ひそやかに満ちてゆく祈りよどうか 雨とともに
鮮やかな虹を胸に描いて僕らは集うよ
雨音が響くよ