モノノアワレ
言葉がほんのひとつ
足りなかっただけで
その後はたった一度の
言葉も交わせぬまま

言葉がほんのひとつ
多すぎただけで
この世にたったひとりの
人にサヨナラをした


言ってもいいことと
言わなきゃダメなこと
選んでる間に
君は背を向けて


言葉がなかったら
迷わず抱きしめてたろう
手紙を読み返し
泣く手間も省けてたろう



あのとき一瞬だけ
抱いた思いを
400字原稿用紙に
書き上げたとしても

伝えたいことは
何一つ書けなくて
それでも先生は
花丸をつけてくれた


言葉にすることで
醜くなることも
言葉にしなければ
忘れてしまいそうで


言葉がなかったら
こんなことで悩まずに
すべてをぬくもりで
伝えられたのだろうか



あいつあなたにも
言ってみたかったこと
いざ目の前にすると
口をつぐんでしまうこと

言ったってやらなけりゃ
意味がないという人
見返すためにとりあえず
言わなきゃな ああ


言葉に直したら
嘘になってしまうとしても
ギリギリのところまで
表していたいんだ