こんな私をやめたがりながら
こんな私で近づきたがる
たまにとおくを眺めてみながら
多分未読で少しほっとする
台風の後の
風が膨らますシャツの心地よい圧
ねえ、沈める音をちょうだいよ
水の底
あーあ、好きな声。
あの空は真っ黒なのに
澄んでいるのがわかって
どうしようもなくて
どれだけ君の音を集めて
君の歴史を紐解いても
君にはなれないし
伸ばした手は空を切るし
昨日見た夢みたいにいきはしないや
君の温度を測りかねては
私の湿度に気が遠くなる
砕けた岸の沈む浅瀬に
泳ぐのをやめて漂った
辿り着かないから
どうかずっと自由で居て
君の眼差しがよぎる
あーあ、好きな声。
あの月も朧気なんて
祈りのような自信で
どうしようもなくて
どれだけ君の街を歩いて
君の気配を辿ろうとも
君にはなれないし
時計も巻き戻せないし
あとは思い出を食べて生きればいいか