誘惑の森
こだまする
小さな虫の羽音みたいに
少しずつ心をひっかいて
ざわつかせる君

深い森に いっそ誘って
帰りたくないの

君がいいと言うまで
目は開かずにいるから

溶け合って隅々まで
君にひたされる
2人は同じ木に実る
お揃いの果実

切ない甘さを搾り出す
うわごとは不規則なリズム
唇は君の名を無意識に歌う

木漏れ日が降るように
閉じた目の暗闇に
光がちらばる
影は複雑なもようを描く

君の指の熱のせい
まぶたに触れては
試すようになぞる
万華鏡の森へと迷いこむ

こらえきれず目を
開けば君と視線が重なる

唇は君の名前を 無意識に歌う
返事はいらないの
でも手は離さないで