名の無い歌い人は 世界を眺め歌っている
この世は腐りかけの果実のようだ
悲しくも甘い匂いがする
同じ朝を迎え 同じ一日が始まる
溜息は空に溶けて色を濁した
こうしてまた忘れていく
「誰かが望んだ明日に 今呼吸している」
今過ぎた一秒を 今流れる血液を
当たり前のものを 愛して
屋上から見下ろした地面に 望む結末を思う頃
地雷が鳴り響き 命もろとも夢が吹き飛んだ
病室の窓から空に向けて祈りを捧ぐ頃
溜息は空に溶けて色を濁した
なんという贅沢だったのか
「誰かが望んだ明日に 今呼吸している」
今過ぎた一秒を 今流れる血液を
当たり前のものを 愛して
愛の歌に溢れながら 憎しみ 刃を手に抱く
数多の反戦歌も銃弾が全て 撃ち落していった
名も無い歌い人は 世界を眺め歌を歌っている
「この世は腐りかけの果実のようだ
だから 笑っていよう
少し 笑ってみよう
せめて 笑っていよう」