風に鳴く、吊橋は軽やかに波打つ。
湖畔に寄せた傷んだ船。
小高い丘の上、短い草花を
弾くように飛ぶモンシロたち。
呼ぶ声が夕暮れを告げる。
帰り道の先に暖かな灯よ。
懐かしく、忘れがたく、
今も目を閉じては映し出す。
木陰が散らばった。
鳥の羽音を追い、見上げた空は青く、青く。
まだ覚めぬ夢のよう。
微かな温もりは夢か幻か、頬に手をやる。
あの声が聞こえなかった。
帰り道の背に虚ろな灯よ。
哀しく、言葉もなく、宛てなく歩いた。
淡く、くすんで見えない。
時は行く。人は流れて、
気付けばあの丘に、見る影もなく。
遠く、深く想い、空は時を架け
今はただ優しく。
呼ぶ声が夕暮れを告げる。
帰り道の先に暖かな灯よ。
懐かしく、忘れがたく、
今も目を閉じては写し出す。