こたつとおかん
「ずっと探してたのよ。今までどこにいたの。
連絡ひとつもしないでさ。心配するじゃない。
怒る気も失せたからとりあえずご飯でも食べなさい。」
「寒かったでしょう。お風呂沸かすから
食べ終わったらすぐに入りなさい。
もう食べないの?まだまだあるのに。
そんなんだからちっとも太らないのよ。」
あなたの優しさが目にしみるからこたつのすそで顔を隠した
懐かしい香りに誘われていつしか深く眠ってしまった。
「ずっと笑ってきた。今までそうしてきたの。
どんなに辛いことがあったとしても。後悔するじゃない。」
教えてくれたのは、他の誰でもないあなた。
「いつまで寝てるの?子供じゃないんだから」
気づけばすっかり冷めたごはんとお風呂
「こたつで寝ると風邪ひいちゃうから、
寝るんだったらベッドで眠りなさい。」
あなたがぼくの名前を呼ぶ度に兄貴の名前と間違うのは
離れてた時間と寂しさと情けなさとが入り交じってるようで
あなたがぼくの名前を忘れても忘れえぬ思いがここにある。
懐かしい香りもぬくもりも全部ここから離れやしない
いつまでも生きてとは言えないが、せめて孫の顔を見るまでは
僕のことなど忘れていいから、笑顔のままのあなたでいてほしい、、
そんなこと、思いながら、またぼくは眠ってしまった。