サイレン・デート
怪獣の君に恋した。
笑うと大きな牙が光る。
怪獣が僕に恋した。
羽と角と尻尾が生えてる。
飛ぶのは苦手らしいけど。

ロングスカートがひらひら、尻尾を隠す。
大きな帽子はぶかぶか、角も隠れてる。

大きな羽はどうしても隠せなくて、
街行く人は君を指差す。

「おい、ちょっと待てよ君。」
突然君が走り出した。
「笑ってる奴らを殴りたいの。」
通行人を殴っちゃった。

パトカーがやって来て、僕らを追いかける。
尻尾も角も剥き出しで、僕を抱えて君が走る。

サイレンが鳴っている。

捕まっちゃったら、
君は研究所、僕は刑務所に。
逃げるしかねえなあ。

怪獣の君に恋した。
笑うと大きな牙が光る。
怪獣が僕に恋した。
羽と角と尻尾が生えてる。
飛ぶのは苦手らしいけど。

君は嬉しそうに、
「思い出ができたね。」と。
別れの言葉みたいに。

怪獣の君に恋した。
叶うはずがなかった。

怪獣の君に恋した。
笑うと大きな牙が光る。
怪獣が僕に恋した。
羽と角と尻尾が生えてる。
飛ぶのは苦手らしいけど。

銃弾は君の心臓を打ち抜いた。
怪獣が倒れてる。
怪獣が僕に何かを言っている。

サイレンが鳴っている。