名前を欲しがった猫がいた いつも周りを羨んでいた
闇に溶けそうな体 光る目が繋いでいた
色褪せた赤いベンチの隅 乾いた音のする高架下
僕だけの場所はあった だけどいつでも独りだった
ある時友達ができたんだ それなりに僕は嬉しかった
ああいやホントはね 飛び跳ねるくらい嬉しかった
いつか友達が尋ねたんだ 名前のない猫に聞いたんだ
「君の事を何て呼べばいい?」
どうして僕だけ名前がないんだろう?
どこかに落ちてるんだろう?
少し探してみるとしようか
走った 街の灯と息が切れるほど
幾つも足音響く夜すり抜ける
雨の日 濡れた手 見つからないように
頬拭ってごまかして
超えてきた夜を数えてみた 気づけば色々落としてきた
ああ 少しだけ喉が渇いたな
偶然通り掛かった子供
「君には名前すらないのかい?」
気まぐれな少年がくれた名前
ルーサー
そうさ
ルーサー
何だっていいさ
そういえばここは何処だ どうして誰もいないの?
僕にも名前ができたんだよ
誰か呼んでよ
夜の水溜りは僕を映さないそうだ
今頃何してるんだろう
君は待っていてくれるだろうか
探した 叫んだ 道も分からずに
色んな景色をひたすら駆け抜ける
失くした思いを拾い集める旅
大事なモノに気付いた
僕がきっと欲しかったもの
僕がずっと欲しかったもの
僕のこと呼んでくれる声
僕を呼ぶ温かな声