東京
東京


東京駅に
一人降り立ったあの日の僕に
怖いものなどなかった


いつも通りの朝 気だるくタバコをふかし
カーテンを開けて 意味もなく空を見る
少し目覚めの悪い体を抱えて
テレビでも見ようかどうか迷っていた

覗くブラウン管の向こうには様々な現実が
次々と胸を痛ませるニュース
それでも僕は今日を生きて
未来に希望を抱いて
走らなきゃいけないんだ
いちいち悲しんでいる暇もなく

行き交う街の中 人混みをかき分けて
目的地を目指して 重たい荷物を抱え
肩がぶつかりあって その度頭下げる
振り返りもせず 舌打ちされながら

まるで誰もが自分に向かってくる敵のようだ
自分を守ることで精一杯だ
それでも僕は今日を生きて
自問自答を繰り返して
時には涙するんだ
ぶつけようのない苛立ちを隠して

一体この街のどこに
あの日夢見た場所はあるの?
ただ一つ確かなことは
僕は今日も強く生きて行かなきゃいけないってこと

負けるもんか
負けるもんか


ふさぎ込むばかりの日々が追い討ちをかけ
何をしていても抜け殻のような気分
そんな毎日でも
かろうじて心折れずにいれたのは
捨てた故郷の存在

とにかく何でも良かった
夢中になれるものがあれば
それだけあれば毎晩夢を描けた
しがみついていようが
這いつくばっていようが
夢だけは僕を裏切らず傍にいてくれた

一体こんなことのどこに
何の意味があるかなんて
知りたくもなかった
ただ自分が自分らしくいられること全てだった

泣くもんか
泣くもんか


ふいに鳴った電話 母親から
「元気でやってるか?」それだけの会話
俺ほんとにもうだめかもしれない
喉まで出かけた言葉押し殺した

大丈夫だ心配すんな
大丈夫だ心配すんな
大丈夫だ心配すんな

受話器を置いた手が
少しだけ震えていた
泣いてなんかいないぞ
泣いてなんかいないぞ

東京駅に
一人降り立ったあの日の僕に
怖いものなどなかった
大丈夫だ 自分を信じられるうちはまだできる

負けるもんか
負けるもんか

泣くもんか
泣くもんか