Feb24
水ようのともだち
2021年2月24日 yukio
真夏の夜、終電がなくなり、始発まで待とうと西新宿の公園のベンチで寝ようとしたのだが、蚊がしつこくまとわりついて来て眠れなかった。若い頃のもうずいぶん昔の話だ。街灯の下、横になってると、おじさんが声をかけて来た。そんなところで寝ていると蚊に食われるので、家がそこだから寝させてあげるよと言う。その夜は嫌(いや)なことだらけで、すべてを忘れたいと思っていた。助けに船だと思い、ついて行った。タクシーに乗せられて5分ほど、マンションの何階かにエレベーターで登り、部屋に入って、明かりを点けると、天井(てんじょう)にはミラーボールが吊り下がっていた。何だか嫌な予感がしたのだが、気にしないふりをしてソファーに腰掛けた。先に汗かいてるだろうからシャワーを浴びろと言う。風呂場からあがるとバスローブを貸してくれて、”テレビでも見てろ、オレもシャワー浴びるから。”と言って、おじさんもそのあとに風呂場に入って行った。その後は、余り語りたくない。予想通りおじさんは、迫って来て、そのマンションから明け方飛び出して来たのであった。始発の電車の中で、

自分は一体何をやっているんだろう?

と、おもわず涙ぐんでいた。暗くて、重い青春時代の思い出である。

その日は、ともだちに誘われて新宿に酒を飲みに行ったのだった。飲みに行ったと言うか、女の子をナンパしに行ったと言おうか、とにかくそのともだちがナンパしようとうるさいのである。口の重い自分は、そんなにナンパに積極的なわけでもない臆病な性格にも関わらず、強引にナンパに誘うので渋々つきあっている内に、ある二人の女の子が一緒に酒を飲んでもいいと言う。歌舞伎町の表通りの小さな居酒屋に入った気がする。ともだちが話を盛り上げようとするのだが、自分の方がなんだかそのわざとらしい会話についていけなくて、場は盛り上がっているのか、盛り下がっているのかよくわからず(笑)、結局はその女の子たちは帰ると言って店を出て行ってしまった。

ともだちは、こちらの態度が気に食わなかったのかどうなのかはわからないが、自分たちもこの店を出ようと言う。お金を払おうとすると、女の子二人分の飲み代もあるので店員の隙(すき)をみて逃げようと言って来たのだった。まさか!そんなことをともだちから言われるとは思ってもみなかった。その場でしっかり断ればいいものを、自分のこの優柔不断な性格がいけないのか?魔が刺したのか?その言葉に従ったばかりに、二人で素知らぬ顔をして店を出ると、店員が追いかけて来て捕まってしまったのであった。

”お前らふざけるな!金をちゃんと払え!”

殴られるかと思った瞬間、ナンパして店から先に出て行った女の子二人が横から出て来て、”何?お金が無いの?お金が無いんだったら私たちが払うわよ。”と言ってくれたのだった。自分達はお金がない訳ではないと女の子たちに説明して、店員にお金を払ってようやく苦境を脱出、そのともだちともその場で別れた。別れたのはよかったのだが、帰りの終電の時間が終わっていた。それで西新宿の公園で夜更かししようと思い上記のような体験をしてしまったのだった。

飲み逃げしようとして捕まり、まさかのおじさんにまで襲われてしまった。。。こんなとんでもない一夜があっていいのか?あそこで警察に引き渡され、あるいは、おじさんの家から逃げ出せられなかったならばと、今、考えてみると、、、自分の人生はこんな形にはなっていなかったようにも思う。

そのともだちとは田舎時代からのつきあいで、その事件以来、ほとんど連絡もしていなかったのだが、数年か後に電話がかかって来て、父親の仕事を継ぐために田舎に帰ると言う。要らない家具とかあるので良ければお前にやるよ、取りに来いよ、と言ってきた。わかった気が向いたら行くよと言って電話を切ったのだが、行くはずがない。自分の心の中でそのともだちを切ったのだ。少し大人になれた瞬間だった。

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