松本さふらん

　｢デミアン」という曲をつくり録音しました。
　二月くらいに曲も詞もかいていたんですよ。あまりにも勢いよく出来てしまったので、すぐに完成とするかどうしようかとためらっていたのです。
　そうヘッセの小説のあのデミアンのことです。十八のころ読んでからずっと好きなわけですが、何度も読み返したりしているわけではありません。“カインのしるし”とか“ベアトリーチェ”とか、モチーフを自分のなかで勝手に変換してしまっているので、あえてページをめくり返す必要がないのかもしれない。

　楽曲のほうはやっぱり童謡なんですな。詞の組み方は｢赤とんぼ｣、楽想は｢青い眼の人形｣あたりを聴いていないと出てこなかったかもしれない。起承転結だよ人生は！
　でも、童謡の思想で曲を書くと、とりもなおさずおっさんくさくなるというこの逆説、いや順接なのかな…
　まあいいさ！ふけ顔のひとが経年劣化を受けにくいように、この曲も十年後でもかわらない感情を私やあなたにひき起こしてくれると信じよう。

　この一週間は古い友だちや新しい友だちの音楽にふれてめずらしく充実していたなあ。余韻の消えないうちに自分も音をつないでゆきたいものです。