THE ROMANCE JOE

男は深夜、車で道路をひた走っている。



この時間帯の運転が好きだ。排気やほこりで昼間はどこか霞む街が、心なしか夜になるとはっきり見える。オレンジ色の常夜灯が、街を浄化してくれているように思える。

ドリンクホルダーには、お気に入りのスターバックスのエスプレッソ（＊嘘である。本当はただの缶コーヒー）。車中にうすくかかっているのは、お気に入りのR&B（＊嘘である。本当はラジオ・オールナイトニッポン）。

赤信号で車を停止させる。そういえば、信号機の赤と緑の野組み合わせはクリスマスみたいだなと、男はぼんやり思う。

ふと窓の外に目線をおくる。男の視線の先には、モスバーガーがあった。

そのモスバーガーの店先に、宣伝用の一本の旗が立っている。そこに書いてある文字を、男は一人つぶやいてみる。

「メリー、クリスモス・・・」

ふん、と男は鼻で笑い飛ばす。

そして男は車を発進させ、一人こう言うのだ。




「チキン、食いっっっって～～～～～～～～っっ」




チキンが、食べたいのである。



チキンに対する衝動が、嵐のごとくトムに押し寄せている。何だろう、この気持ちは。抑えきれないこの気持ちに、涙ぐみそうである。

‘メリークリスモス’という、出会いがしらの抱腹絶倒のギャグに端を発した衝動ではあるが、やはりチキンはチキンでも、ケ○タッキーのチキンが食べたいのである。



いかん、いかんのである。

あまりにチキンが食べたくて、なんか本当に泣きそうになってきたのである。「泣きたくなるなる、ケ○タッキー」というキャッチコピーが、頭をよぎる。

その辺でポッポしているハトでさえ、美味しそうに見えてきたのである。もうハトを見ても、ハトの後ろに揚げたてのチキンが透けて見えるくらいだ。

まさか、意外とイケルのではあるまいか。野生だし。



もう我慢ならぬのである。かくなる上は



明日、近所の公園に行き、ハトの捕獲に向かう。



ハト狩りじゃ