Jan22
これ俺以外の誰か書いてくれねぇかな?第10回
2007年1月22日 横山
 楽曲更新順で上位に入るために、曲を更新しようかと思ったのですが、ファスナー(「ファ」 ニーボーン 「スナ」 イパ 「ー」 ズ)のCDが手元にないです。なんかファジーな気分なので、昔友達と録った民族音楽をUPします。



    バンド名:Nyadorara(にゃどらら)

    メンバー:SWA、KEN、COM、ABE

 アルバム名:NRⅡ(えぬ・あーるつー)

   UPした曲:伝承

  <解説>
 ミニアルバムの2曲目に位置するこの曲は、部族の伝承を話す親子の会話から始まる。耳を澄ませば聞こえてくるだろう。子が親を呼ぶ「ダディ」という声が。なにやら子供が父親を怒らせるようなことを言ったらしい。怒鳴り声まで聞こえてきた。
 一曲目「洞窟」の興奮と緊張も冷め遣らぬ中、このユーモア溢れる一説から始まるセンスは正に脱帽である。伝説とはもはや物語のことではなく、Nyadoraraそのものの存在なのかもしれない。もはやこれ以上無粋な解説は必要ないだろう。伝承はもう始まっている。語り始めよう。彼らのレジェンドを。



 この親子が住む地域では、遠い昔、部族間の大きな戦いがあったらしい。その戦いは、結果片方の部族が滅んでしまうほどすさまじく、彼の父親の父親の父親の(略)、そのまた父親も、この戦いで名誉ある死を遂げた。戦いは永遠に続くかと思われるほど永く、その中で彼の村は敵に焼き払われてしまったという。



 
 (この辺りから推測するに、彼ら親子は部族の最後の生き残りなのかもしれない。)





 ある時、親子の部族に一人の天才が生まれた。彼は真っ暗な洞窟を止まらずに駆け抜け(1曲目:「洞窟」より。部族の成人の儀式にも使われる洞窟をイメージしている。伝承によると天才はその洞窟を半日で抜けたという。ちなみに実際の儀式では、丸一日かけて洞窟中程にあるそこにしかない石を取ってくる。)、深い海の底を一息で泳ぎきり(3曲目:「深海」より。まるで水の中にいるようなエフェクティブなサウンドが我々を包み込む。)、危険なジャングルを無傷で飛ぶように抜けて行ったという(4曲目:「開戦」より。最後の鬨の声が否が応でも聴衆を引き付ける。血が騒ぐとはこういう感覚であることを我々に思い出させる。)。彼には部族の戦いの神『Nyadorara』の名が冠せられた。



 (残念ながら私が持っている音源はここまでである。しかしながら、ある熱狂的なNyadoraraファンの友人のつてにより、一度聴き、物語を教えてもらった。彼は8年前この民族に帰化し、彼らと共に自然の一部となった。)




 Nyadoraraは強かった。戦場に着くとそのまま武器を持ち、100の首を挙げた。しかしそれは余裕を生み、余裕は慢心を生んだ。それでもNyadoraraは強く、戦いが終わりに近づく頃までには、更に100の首を挙げた。Nyadoraraは戦場で崇められた。





 そんなある日、Nyadoraraの下に傷を負った美しい女が運ばれた。Nyadoraraは彼女を見初め、手当てをしてやろうとした。すると何人かの側近の者が、素性が分からない者は危険だから目覚める前に殺すべきだと主張した。Nyadoraraは彼らの言葉に耳を貸さず、逆らった者の首を刎ねた。Nyadoraraは逆らう者がいないと分かると、女を自分の隠れ家に連れて行った。(幻となった5曲目:「生命」は、こうしたラブロマンスだったらしいが、残念ながら私はこの音源を手に入れることが出来なかった)





 手当てを始めて7日目の夜だった。女は目覚め、Nyadoraraは言った。








 「お前の命は俺が助けた。だから俺のものだ。俺が死ぬときはお前も殺す。」








 石のナイフを女に突きつけ、言った。Nyadoraraは自惚れ、女は答えた。








 「わかりました。私が死ぬときにあなたも一緒に死んでくれるのなら。」







 ナイフを受け取り、Nyadoraraに突きつける。女は笑い、Nyadoraraも笑った。








 「それはもうお前の物だ。俺が死んだなら、それで自分の喉を突くがいい。」

 





 そして夜は明けた。再び戦いが始まる。戦士はまた戦場へ帰るのだ。しかしその日はいつもと違った。女がいる限り、Nyadoraraは戦いの神ではなく、ただの男だった。(私はこの6曲目:「堕落」に入るはずだった筈のプロットを聞いたとき、いくつの時代を超えても変わらない男の性というモノを思い、苦い薬を飲んだ心持だった。)




 その日の戦いはいつもと違った。敵は何故か女の存在を知り、こう言ったのだ。

 


 「急いで帰るがいい。あの女はもう死んでいる。」




 Nyadoraraは怒った。怒ってその場でそう言った敵を殺してしまったのだ。敵はもう何も語らなかった。本当だとも言わなかったが、嘘だとも言わなかった。
 Nyadoraraは怖くなった。怖くなって、隠れ家に戻り、女の無事を確かめずにはいられなかった。




 Nyadoraraは走った。洞窟を見通すその目には、もはや女の姿しか映らなかった。
 Nyadoraraは泳いだ。一息で海底を泳ぎきる呼吸も、心を映しもはや上がりきっていた。
 Nyadoraraは急いだ。ジャングルを無傷で走り抜けた身体は、今や泥と擦り傷で薄汚れている。


(この焦燥感溢れる7曲目:「狂気」は、狂ったような叫び声と、鳥の鳴き声が、不気味さと虚無の世界を見事に表現していた。)





 家に着いたとき、目の前には横たわった女の姿があった。Nyadoraraは崩れ落ちるように横に膝をついた。Nyadoraraは力なく女を抱き寄せた。その瞬間、ふと女の手が動いたと思うと、首筋に鋭い痛みが走り、全身の力が抜けた。女は生きていた、生きてNyadoraraの石器ナイフで彼の喉を貫いた。暖かい血が流れ出し、対照に自分の身体が冷たくなっていった。その時Nyadoraraは初めて悟った。女は敵部族の者だったのだ


(なんということだろう!!この8曲目:「裏切り」は、部族の勝利を信じて疑わなかった私達の思いを裏切ったのだ!!)。


こうして神(Nyadorara)は死んだ。



 Nyadoraraを失った部族は、もはや抗う術もなく、短期間のうちに敗北していった。そして彼らの部族は滅んだ。(9曲目:「敗北」は暗く激しいBGMをバックに、父親が物語を締めくくる。物語は終わり、滅び行く彼らはひっそりと語り継ぐ。遠く昔の祖先の戦いを...。)。









 
 
さて、レポートや~ろおっと。


                      THE END

 ※この話はフィクションであり、実際の人物、団体、部族等とは一切関係がありません。また、この日記は近々削除される恐れがあります。
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