Aug4
短編小説~DO YOU WANNA DANCE?~
2008年8月04日 カオスマンの今夜も脇道放談37
「どちらも味わいたい欲張りなアナタに!!たぬきつねうどん!!! 570円!!」

「ったくあのヤロー!!!」「バカーン!!!!」

「痛てーなコノヤロー!!!!」


午後9時。

さっきから酔っ払ったリーマンがたぬきつねうどんの看板をぶん殴っては奇声を上げている。



通行人は当然誰も見向きもしない。



「ったくあのカス殴ってこいよ。営業妨害だぜ。完全に。」

「店長行ってきて下さいよ」

うどん屋はガラガラだった。絶対あいつのせいである。

いや、あいつ一人のせいではない。

様々な要因が重なり、今のこの店の状況を作り出しているのだ。

要因を挙げるとするならば、やる気も覇気も無い若いくせに変にくたびれた印象のバイト店員と社員。

清掃の行き届いていない店内。

揚げてから10時間以上経ったかき揚げ。

食事と云うささやかな至福のときにこんなところでメシなど食いたくないというのが人情だろう。

「そば、うどん にしおか」

と名づけられた店には5人程の従業員が働いていた。

外のリーマンに毒を吐いている内弁慶の匂いのする男。

こいつは雇われ店長として働いている西岡。

店名と同じだが店とはなんの関係も無い。

たまたまらしい。

当の本人も最近まで気付かなかったらしいし。

25歳。独身。


外のリーマンを殴って来いと言われている男。

バイト店員、上原。 22歳 一応大学生らしい。どうでも良いが。

「あー!!! もう店閉めようぜ!!暖簾閉まって来い!!」

「どうせ行きたくないんでしょ。」

上原はぶつぶつ言いながら入り口へ歩いていった。

こう見えてこの二人、仲は悪くない。

店長とバイトと云う間柄でもお互いクソミソに色々言い合っている。

今時っぽい。

上原は入り口で1回ため息をついてから戸をガラガラと開けた。
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